これまでの壁構造は、外壁そのものにいくつもの多くの機能を持たせていました。このため、外からの水に対しての防御は徹底的にコーキング等でシールするしか防水に対して効果は望めませんでした。木造住宅の損傷が大きくなる理由には通気層がない壁構造には内部結露等の大きな問題があることがわかってきました。外壁材そのものに過度の防水性を持たせると、シールが切れた時には、ポンピング現象と言って、風の圧力で水が壁の奥まで侵入してしまいます。外壁の性能は気密性能よりも高い水密性能が要求されます。
通気層工法には大まかに外壁に雨避け、風避けの役割を持たせて外壁の役割を分離させることで、雨漏りのほとんどをなくすることが可能となりました。万一外壁に雨が入ったとしても、通気層を通じて下に落下するので壁の中まで雨が侵入することはなくなります。もちろん断熱・気密層の施工に欠陥があれば通気層があっても、そこから雨水が侵入することがありますので気密処理は丁寧に行わなければなりません。
内断熱(充填断熱)工法であればタイベックシートの施工には必ず防水テープで防水処理が必要です。意外と多くの現場ではタッカー止めだけの施工になっているようです。写真①の問題点は外壁張られたタイベックシートは防水のために一応下部から上部に向かって施工されているもののジョイント部には気密・防水テープがありません。また横胴縁の施工方法は通気できない施工になっています。
写真②のようにタイベックの施工が丁寧に防水テープで処理されている現場では機能が100%発揮されるので風の影響はなくすることができ、断熱材に含まれた熱を逃すことありません。高断熱・高気密住宅は断熱・気密が高い性能がある分、冬は快適な室内環境も夏に室内に取り込まれた熱は排熱されずオーバーヒートを起こしてしまうことがあります。外壁材は夏の強烈な陽射しによって外壁を熱し、熱は伝導によって外壁を通じて内壁まで伝えるため内壁の表面温度が室温より高くなってしまい不快な体感温度を体験することになります。
そこに外壁材と内壁材[断熱材)の間に通気層があると、いったん熱の伝導を遮ることになり、熱せられた外壁材の熱は通気層を通り上部に排出されます。
外壁材の中には断熱サイディングのように外壁材の裏側にウレタン材があるものは強烈な陽射しがあっても通気層内の温度を和らげる効果があります。
このように通気層は室内の表面温度を高くしてしまうことを防ぐ機能もあるのです。
最も重要な項目で透湿機能を果たす役割を持つ防水透湿シート(タイベック)の存在、タイベックは水を通さずに水蒸気は通す機能があることは周知の通り、これは目には見えないが水の分子よりも小さく、水蒸気よりはるかに大きい穴が開いているためで、この穴を通して水蒸気が排出される機能があります。もともと通気層は壁の中に流れ込んできた水蒸気を早く排出させようと考え出された工法であって壁内結露との戦いの中で生み出されたものです。通気層なしで施工された写真①のようなケースがまだまだ多くありますが、暑さ対策+壁内結露防止になる通気工法を是非標準に採用してもらいたいものです。
(注)写真1の断熱リフォームの施工方法⇒室内側は既存のままにし、外側から既存の外壁を剥がし外側からGW16kg/m3100mmを充填し(防湿シートなし)タイベックシートを張り、横胴縁で押さえて外壁を縦張りに施工する方法になっています。通気胴縁は横に取り付け通気できる施工方法になっていないので通気層の役目は不十分で結露の危険大です。意外と写真①のように施工されている現場は多く見受けられます。